結社セレクト
氷室俳句会〈氷室叢書〉より
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港のある街 宮沢淑子句文集
令和4年(2022)発行 遺句集
氷室叢書
青磁社
二〇二〇年の句には次の句があり、旅にまたでることを楽しみにして夢にまでナイルが流れていたようです。
昼寝覚夢にもナイル流れをり
この夢の思いが実現することなく、淑子さんは旅立たれました。この『宮澤淑子句文集』は、淑子さんが出版を意図して自ら作成しつつあった原稿をもとに、停車場句会のメンバーが協力して完成したものです。
(尾池和夫 氷室主宰) -
宇治川 三和幸一
令和4年(2022)発行
氷室叢書
青磁社
小春日の宇治大橋を渡りけり
花ふぶき川を背にして先陣碑
爆心と覚しき辺り落葉踏む
宇治川は氷室俳句会発祥の地である京都市伏見区石田の南の辺りから、流れを西へ変え、やがて桂川、 鴨川と合流し、木津川とも合流して、淀川として大阪湾へ流れていきます。
滋賀県の琵琶湖を含めて広大な淀川水系ができあがっており、その中に三和幸一さんの吟行地があって、この句集の中心を構成する句が生まれました。
(尾池和夫 氷室主宰) -
コンパス 井深信男
令和2年(2020)発行 遺句集
氷室叢書
青磁社
荒ぶる海なだむる如く山眠る
重ければ海に入りたる鯨かな
海鼠なれば水底の外知らぬらし
大空をなほわがものに鷹一羽
この続きは、天国でしっかりと詠み貯めてくださいと、声をかけたくなるような句集ができました。お目にかかったのが、つい昨日のように思い出される、そのような句集なのです。
この句集の一句一句を、俳句を志す後進の方々が学び、この心意気を継いでくれることを、私は切に願っています。
(尾池和夫 氷室主宰)